管理職スタッフ
中村 雄
入社:2003年度
役職:常務取締役

エンジニアが経営層に必要とされる時代

IT業界は、毎日のように新しい技術が生まれ、廃れていくような変化の激しい業界です。そうした中で、自社が得意とする技術・エンジニアリングの領域をどのようにして広げ、深め、強めていくか。その選択が非常に重要だと感じています。

今は「技術」というものが加速度的に高度化、抽象化している時代です。私はエンジニアを経て、経営に携わるようになり、現在は経営企画や事業、自社サービスの課題に対して、技術をどのように活かすことができるか、その支援を行っていますが、私のようなエンジニアが経営層に加わるということが、今後、他の企業でもますます増えていくと思います。

それはITの世界に限った話ではありません。世の中の企業がITを当たり前のように使う時代ですから、多くの企業でテクノロジーの知識が必須となり、プログラミング、機械学習、データサイエンスが、会計の知識と同じくらいに扱われていくでしょう。それほど、企業にとってなくてはならない知識となるはずです。

しかし、技術はあくまでツールです。ツールとしての「技術」そのものを求められていた時代から、それをいかに世の中やビジネスの「価値」に変換することができるか。そうした考え方やスキルがこれからの仕事に結び付いていくのだと感じています。

役立つものではなく、意味に価値を見出す

雄さん-写真1モノがあふれている現代は、商品・サービスを選ぶ基準に「感情的、情緒的な要素」が含まれるようになってきています。「いかに多機能か」といった有用性ではなく、「その人にとって意味のあるものか」に価値が生まれているのです。

「役に立つもの」というのは競争が厳しく、1位でなければ生き残れないほど、その分野で戦うのは難しいものです。IT業界でいえば、「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」もそうした一面があります。例えば検索エンジンであれば、情報の正確性や検索スピードといった性能・有用性が、選択や購入における大半の基準を占めます。役に立つものほど、情緒に訴えかけるような付加価値をつけにくいということです。

さらに言えば、ITはコストが非常に低く、GoogleやFacebook、Amazonは無料で使うことができますから、その中で競争していくというのは非常に大変です。しかし、GAFAの中でもAppleだけは少し違います。「私はAppleしか使いたくない」というファンが一定数いて、競争の激しい業界の中で唯一、「意味」で購入されています。

今は、心を揺さぶるようなものをつくれば売れる、おもしろい時代です。「どういうモノをつくろうか」という発想から、お客様・ユーザーは何を求めているのか、何を必要としているかを考えて価値をつくっていく。会社の規模は様々ですが、好きになる気持ちには大小の関係はありません。ファンになってもらえるサブスクリプションモデルをつくり、最大限の価値をお客様に提供するビジネスをつくっていくことが重要です。

会社は社員1人1人の「価値」の集合体

これから求める人材像としては、しっかりと自分の目標を持っている人が大切だと思っています。「目標を持つ」ということは、「現状を知る」ということ。自分の置かれている現状を理解して、目標に向かって進むべき道を意識できる人がいいですね。

新しい技術が矢継ぎ早に登場するIT業界では、表面的な新しさに目を奪われてむやみにそれらの技術にふれてしまうということがあります。しかし、重要なのは、自分の目標をしっかりと決め、そこに至るまでのギャップを埋める技術は何か、どの技術にチャレンジするかを考えることです。

ビジネスや社会の動きに目を向けてみると、その裏側には何かしらITが使われています。成功しているビジネスや社会の裏側には、どのようなテクノロジーが使われているのか、なぜその技術なのか、自分だったらどのような方法でそのビジネスをつくるか。そういったことを日頃から想像してみると、自分の目標とそのために必要な技術が見えてくると思います。