「マーケティングオートメーション」「MA(エムエー)」というキーワードを聞いたことがある方は多いと思いますが、マーケティングオートメーション(MA)が解決できる課題や必要性、マーケティングの何を自動化してくれるのか?を明確に把握している方は多くありません。
実は、マーケティングオートメーション(MA)は、デジタルマーケティングや営業のデジタル化において重要視されており、大企業だけでなく中小企業でも導入を始める傾向にあります。
ここでは、「マーケティングオートメーションで何ができるのか?」「マーケティングオートメーションの効果やメリットは?」といった基礎知識から、導入する前に気をつけるポイント、導入プロセスにいたるまで幅広く紹介していきます。
読み終えていただければ、自社にマーケティングオートメーションをいつ導入すべきかが明確になり、具体的なアクションを起こせるようになります。
では、さっそく解説していきます!
1. 【基礎知識】マーケティングオートメーション(MA)とは
マーケティングオートメーション(MA)とは何か?
マーケティングオートメーション(Marketing Automation)とは、マーケティングオートメーションツール(ITソフト)を使用し、マーケティング業務のサポートや自動化をすることでマーケティングの効率化と生産性の向上を実現させる仕組みです。
また、ツール(ソフトウェア)そのものを指すケースもあります。マーケティングオートメーションは、マーケティング担当だけでなく、営業担当も活用することができます。
開発された背景
もともとは、営業の商談管理をするSFA※(Sales Force Automation)というツールが先に開発・普及しており、その後、商談管理の前段階にあたる見込み顧客を管理するツールとしてMAが開発されました。
MAが必要とされた背景には、「顧客を一元的に管理・把握する」という課題の解決が目的でした。
名刺管理システムが普及したことにより名刺情報は全社で一元的に管理できるようになりましたが、見込み客それぞれのステータスに関しては営業の各担当者のみ把握している状況で、他の営業担当者やマーケティング担当といった第三者が把握しずらい環境にあります。
そこで、MAが開発され、名刺情報と顧客のステイタスがデータで一元的に管理・把握できるようになりました。
※近年では、SFAではなくCRMという言い方に変わりつつあります。CRMは「顧客との関係構築を行うこと」でCustomer Relationship Managementの略です。
定義
日本・アメリカのマーケティングオートメーションのツールベンダー企業は、マーケティングオートメーション(MA)を次のように定義しています。
マーケティングオートメーションは、「獲得した見込み客の情報を一元的に管理し、選別や育成を一貫して行うことで、最終的に購買意欲の高い見込み客を営業へ渡す」という一連の作業を自動化する役割を担っているのです。 |
https://bdash-marketics.com/marketing/2382/
マーケティングオートメーション(MA)は、獲得した見込み客(リード)の情報を管理・選別し、育成まで行ったのちに、質の高い見込み客のリストを営業部門へ渡す、といった一貫した作業を自動化させるものです。
MAツールは顧客の一人ひとりとの関係構築と、それを通じた収益アップを目的とするプラットフォームとなり、営業の効率化を図ることができます。
必要とされる理由
マーケティングオートメーション(MA)が現代で必要とされる理由は主に2つです。
【マーケティングオートメーションの必要性】 |
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① インターネット普及によるユーザーの消費行動の変化 ② マーケティング活動の変化・多様化 |
ひとつずつ解説していきます。
① 検索エンジンの普及によるユーザーの消費行動の変化
インターネットと検索エンジンにより、消費者の行動は大きく変化しました。
検索エンジンが普及する以前は、商品やサービスの情報をユーザー自身で得る方法がなく、たとえば、TVや新聞・雑誌といったマス・マーケティングに触れたり、営業マンから話を聞いたりと、企業側からの情報提供によって初めて情報を得られるといった構造でした。
しかし、誰もが検索エンジンを使用するようになった現代では、BtoB・BtoCともに、ユーザーは商品やサービスを購入する前に、自身で必要な情報をインターネット上で収集・精査できるようになりました。
他社の商品やサービスとの比較もユーザー自身でできるようになったため、営業担当と接触しないままWeb上で購入を完結する、あるいは、購入直前の段階で初めて営業担当と接触する、といったように大きく変化しています。
このようにユーザーの消費行動のほとんどがWeb上で行われるため、Web上でのユーザー行動を分析し、一人ひとりにあったコミュニケーションやアプローチを行うことが必要とされているのです。
マーケティングオートメーション(MA)は、行動解析や個々にあわせたコミュニケーションを可能にし、現代にフィットしたマーケティング・営業活動ができるため、近年のユーザーの消費行動に対応できるシステムといえるでしょう。
② マーケティング活動の変化・多様化
インターネットの普及により、Webサイト、コンテンツマーケティングやWeb広告といったWeb集客、動画配信、ウェビナーなど、Web上での幅広いマーケティング活動(Webマーケティング、デジタルマーケティング)が重要視されるようになりました。
多様化かつ複雑化したこれらのデータを蓄積・収集し、分析する必要が出てきたことで、データを一元管理できるシステムのマーケティングオートメーション(MA)に注目が集まっています。
2. 【基礎知識】マーケティングオートメーション(MA)でできること
サポートできる範囲と基本機能
MAがサポートできる範囲を示す前に、マーケティングの一連の流れを抑えておく必要があります。
マーケティングは、一連の流れで
・見込み客を獲得するリードジェネレーション
↓
・見込み客の育成をするリードナーチャリング
↓
・購入の可能性が高い見込み客を選定するリードクオリフィケーション
↓
・商談(営業部門)
というように段階を踏みます。
購買意欲が高い顧客を選定した後は、営業担当に引き継がれ「商談」となります。
マーケティングオートメーション(MA)がサポートできる範囲は、主に、「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」に当たる範囲で、見込み客の育成、購買意欲の高い見込み客の選定です。ソフトやツールベンダーによっては、リードジェネレーションもカバーできます。
◎ マーケティングオートメーション(MA)の3つの基本機能
① リードマネジメント機能
② コミュニケーション機能
③ 企業分析機能
上記3つの機能として搭載されている、代表的な機能を紹介します。
① リードマネジメント機能
② コミュニケーション機能
③ 企業分析機能
上記の3つの機能にプラスして、「外部連携機能」も搭載されています。
たとえば、商談化した顧客を管理するCRMとの連携が可能になるCRM連携機能や、MA上に広告媒体を登録しておくことにより、広告のクリックなどを把握できる広告管理機能、SNSに発信したコンテンツの閲覧状況なども把握できるSNS管理機能などです。
マーケティングオートメーション(MA)と顧客管理ツール(CRM、SFA)の違い
CMSとは専用サイトを構築するシステムで、コンテンツ管理、会員ページ管理などを行います。CRM、SFAは、既存顧客の管理システムで、顧客データベース管理、商談管理などを担います。
そして、MAは、リードマネジメント、コミュニケーションなどを管轄しています。CRM、SFAに関しては、すでに導入している企業も多いかと思いますが、MAは導入中のCRM、SFAに連携させて利用することも可能です。
解決できる課題
マーケティングオートメーション(MA)が解決できる課題で最も大きいものは、「生産性の向上」です。
マーケティングオートメーションには、見込み客の情報を一元管理できること、そして、スコアリングなどを通し購買意欲の高い見込み客を自動抽出できるという特長があり、生産性の向上、収益向上につなげることができます。
また、マーケティングオートメーションでは、見込み客の一人ひとりのステータス管理もできるため、見込み客の取りこぼしを防ぐことができます。
「名刺は交換したがコンタクトはしていない」「過去にお問い合わせをいただいたがその後コンタクトをとっていない」といったケースが増えれば増えるほど、競業の見込み客になってしまう可能性が高まります。
マーケティングオートメーション(MA)は、営業のデジタル化をサポートするシステムでもあります。営業のデジタル化について知りたい方には下記の記事がおすすめです。
3. マーケティングオートメーション(MA)の導入で得られる効果・メリット
マーケティングオートメーション(MA)を導入することで得られる効果(メリット)は
① 営業活動の効率化
② マーケティング効果の可視化
の2つです。
マーケティングオートメーション(MA)は、リードナーチャリング(育成)を行うことでユーザーの購買意欲を高め、購買意欲が高い見込み客のみを抽出しリスト化します。営業担当は、このリストに沿って営業をかけることができるため、従来の営業活動より成約率は上がり、営業活動の効率化を図ることが可能です。
また、マーケティングオートメーション(MA)を導入することで、見込み客のWeb訪問履歴やメール開封率、閲覧回数、クリック率といった行動を数値で計測できます。マーケティング効果の可視化により、施策結果の分析がしやすく、PDCAを回しやすい環境となります。
4. マーケティングオートメーション(MA)を成功させる重要ポイント3つ
課題の明確化
マーケティングオートメーション(MA)を成功に導く最重要ポイントは、課題の明確化です。
マーケティングオートメーションツール(ITソフト)で解決できることは非常に幅広いですが、「自社が抱える課題は何なのか?」「どの課題をMAで解決したいのか?」をあらかじめ明確にしておく必要があります。
営業部門との連携をとる
マーケティングオートメーション(MA)の運用は、マーケティング部門だけで完結するのではなく、営業部門との細かなコミュニケーションが欠かせません。
効果的なリードナーチャリングを実施し、成約率を効率的にアップさせるには、マーケティングと営業担当とが協力し、優良顧客一人ひとりへのアプローチ・コミュニケーション施策を考え実行していくことがポイントです。
中長期的に継続して取り組む
マーケティングオートメーション(MA)は、すぐに効果を得られるものではありません。その効果を最大限に引き上げるには、中長期的に運用しデータの蓄積・分析を継続して行う必要があります。
5. マーケティングオートメーション(MA)導入前にチェックすべきポイント3つ
必要なデータはあるか
マーケティングオートメーション(MA)には、下記のようなデータが必要です。
◎ 顧客データ (会社名、役職、氏名、メールアドレス、電話番号など) ◎ 顧客の行動データ (購入履歴データ、展覧会やキャンペーン参加の有無、Web閲覧データなど) |
マーケティングオートメーション(MA)では、こういったデータを基にして、顧客一人ひとりとの関係性を確認、構築していきます。
上記のような顧客情報がアナログのまま、各部門でバラバラに蓄積されている企業は、まずは顧客情報をデジタル化するところからスタートしましょう。
必須となるコンテンツを継続的に発信できるか
マーケティングオートメーション(MA)では、メールや企業ブログ、SNSでの発信、ホワイトペーパーといったコンテンツが必須となります。
なぜかというと、見込み客をセグメントするためです。
コンテンツを配信することで、ユーザーの反応を取得・計測することが可能となるため、見込み客をセグメントすることができます。一人ひとりの見込み客に合った施策を行い、ナーチャリング(顧客育成)するのにはセグメントが不可欠です。
コンテンツ制作に関して、「社内で制作できる人材がいない」「継続的に作成できる環境ではない」といった場合には、外部委託を利用しアウトソーシングすることで解決できます。
運用する人材の確保
マーケティングオートメーションツールは、マーケティングのすべてを自動でやってくれるものではありません。
マーケティングオートメーションを運用する人材が必要となり、そのMA担当者は、仮説を立てて施策を実施し、効果測定を行って改善施策を実行する、といったPDCAを繰り返します。
6. マーケティングオートメーション(MA)を導入する際のスケジュール
マーケティングオートメーションの導入は、時間をかけて計画的に行う必要があるため、今後MA導入を視野に入れている方は、あらかじめ導入スケジュールを確認しておくことをおすすめします。
【MA導入のスケジュール】
① 現状把握・課題認識 自社のマーケティング・営業の現状を把握し、課題の洗い出しを行う |
② 目的の明確化 MA導入の目的を明確にし、行いたい施策を挙げてマーケティング計画を立てる |
③ 要件定義 想定シナリオの設計や、データ設計、運用部署の範囲確定などの要件定義を行う |
④ MA関連の情報収集(RFI※) ネット上で情報収集したり、ツールベンダーが開催するセミナーに参加したりしてMAの情報収集を行う ※RFI…Request For Information(情報提供依頼書) 企業に製品やサービスの概要などの情報提供を依頼する書類 |
⑤ 提案依頼書(RFP※)をまとめる 要件定義の明確化と情報の整理にもなるため、自社のためにも提案依頼書は作成したほうがベター(提案依頼書の例を後ほど紹介します) ※RFP… Request For Proposal(提案依頼書) 発注側がベンダー企業などのシステム提供者に対し提案書を提出してもらうために依頼する書面 |
⑥ ツールの選定 ツールベンダーやコンサルティング業者を招いて、MAツールと業者の選定を行う |
⑦ 準備・導入 運用体制を確立し、導入に備える |
⑧ 運用 効果測定を実施 |
MAツール選定に入る前に、MA導入で実現したいことをまとめておくことが重要です。その際に利用するのが、提案依頼書(RFP)です。
提案依頼書には、主に下記のような情報をまとめておくとスムーズです。
【提案依頼書】作成のポイント
◎ 背景:なぜMA導入を行うことになったか
◎ 課題:デジタルマーケティング推進上の課題
◎ プロジェクトの目的:プロジェクトの目的を明確化
◎ 対象範囲:システム導入の範囲
◎ システム構成:現行の社内システムの情報
◎ 提案システム概要
◎ プロジェクト内容(スケジュール、進め方、マネジメント方法など)
◎ 運用保守内容
◎ 概算費用
最低限、上記のような情報があると、コンサルティング業者やベンダー企業に相違なく情報と要望を伝えることができます。
7. マーケティングオートメーション(MA)を導入する際の注意点
マーケティングオートメーションを導入する際の注意点は、2つあります。
① 自社の営業方針の確認
② コミュニケーション運用をどうするか
ひとつずつ解説していきます。
自社の営業方針の確認
MA導入を今すべきかどうかを判断するポイントは、自社の営業方針が下記のどちらに当てはまるかでジャッジします。
【営業方針】
◎既存顧客を軸に新規サービスや商品を売っていくスタイル
⇒まずはCRMの整備からスタート
◎新規顧客を軸に既存または新規サービス・商品販売を強化していくスタイル
⇒MA導入の検討からスタート
自社が、既存顧客に対して新規サービスや商品を販売していくという営業スタイルの場合は、先に導入すべきはMAではなく、商談管理システムのCRMです。CRMの整備からスタートし、MA導入はその後に行いましょう。
新規顧客を軸に既存または新規サービス・商品の販売を強化していく営業スタイルの場合は、新規見込み客を獲得することが重要になるため、MAの導入を先に行います。導入の際には、リードジェネレーション(見込み客獲得)もカバーできるMAツールを選定し、ブログやホワイトペーパーといったコンテンツ作成・運用して効果測定を行いましょう。
一般的に、「既存顧客に対して既存サービス・商品を販売していく」ことを営業の柱(収益の柱)とし、次に「既存顧客に対して新規サービスや商品を販売していく」というのが営業のセオリーなので、そこを軸に考えますが、既存のサービスや商品に市場拡大の余地がまだある場合には、新規の見込み客をできるだけ多く獲得していくべきです。
コミュニケーション運用をどうするか
MA導入後に1番マンパワーがかかるのが、ブログ記事やダウンロード資料(ホワイトペーパー)、メールの作成、シナリオ設計といったコミュニケーションの運用です。
結論からいうと、専門知識を持つ人材(コンテンツを作成・運用できる人材)が社内にいない場合には、最初はコンサルティング業者など外部にコミュニケーション運用を委託して、ノウハウを学ぶのが最も現実的です。
最終的には社内でコンテンツを作成し、運用できる体制にすることを目標に定め、例えば、BtoB専業のマーケティング会社と提携して運用を進めるのも良いでしょう。「MAは導入したけれど、ごく一部しか活用されていない……」といった事態を防ぐためにも、どのような体制で推進していくかを検討しましょう。
8. まとめ
最後に、本記事で紹介してきたマーケティングオートメーション(MA)についてまとめます。
【MAとは?】
マーケティング業務のサポートや自動化をすることでマーケティングの効率化と生産性の向上を実現させる仕組みのこと
【MAがサポートできる範囲】
・主に、リードナーチャリング(見込み客の育成)、リードクオリフィケーション(購買意欲の高い見込み客の選定)に当たる範囲
・ソフトやツールベンダーによっては、リードジェネレーション(見込み客獲得)もカバー可能
【MAの必要性】
① インターネット普及によるユーザーの消費行動の変化
② マーケティング活動の変化・多様化
【MAで解決できる課題】
生産性の向上(収益向上)
【MAの導入で得られる効果・メリット】
「営業活動の効率化」と「マーケティング効果の可視化」
【MAを成功させる重要ポイント3つ】
① 課題の明確化
② 営業部門との連携をとる
③ 中長期的に継続して取り組む
【MA導入前にチェックすべきポイント3つ】
① MAに必要なデータはあるか
② MAに必須となるコンテンツを継続的に発信できるか
③ MAを運用する人材の確保
【MAを導入する際の注意点】
・自社の営業方針の確認
⇒新規顧客への販売が軸の営業方針の場合には「MA導入を検討すべき」
既存顧客への販売が軸の営業方針の場合には「先にCRMの整備をすべき」
・コミュニケーション運用をどうするか
⇒ブログやメールの作成・運用ができる人材が社内にいない場合には、最初はコンサルティング企業といった外部に運用を委託し、ノウハウを学ぶのが現実的。必要なノウハウを学ぶことで、将来的には社内で運用できるように体制を整えることも可能。
マーケティングオートメーション(MA)は理解したものの、企業によっては具体的に何から手を付けるべきかわからないという方も多いと思います。
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