近年、動画を活用したマーケティング(動画マーケティング)が中小企業にも広がりつつあります。動画マーケティングに興味があるWeb担当者の方の中には、「動画マーケティングはどんなメリットがあるのか?」「動画マーケティングを成功させるには?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、企業が動画マーケティングを始める際には、動画マーケティングで得られるメリットや効果を理解し、自社が動画マーケティングを活用する目的は何か?を明確にしておくことが重要です。
なぜなら、動画マーケティングを進めていくにあたり、どのような「目的」を設定するかによって、制作するべき動画の在り方が変わってくるためです。
本記事では、動画マーケティングのメリットをはじめとした、「動画マーケティングの基礎知識」について解説していきます。読み終えていただければ、自社の動画マーケティングに活かすことができます。
では、さっそく解説していきます!
1. 動画マーケティングとは
動画マーケティングとは、動画コンテンツ(映像コンテンツ)を利用したマーケティングのことです。企業の商品やサービスの紹介・説明、あるいは企業そのもののPRなどに利用されます。
動画マーケティングにはさまざまな手法がありますが、大きく分けて下記の2つに分類されると覚えておくとわかりやすいと思います。
◎ 企業のマーケティング動画
自社Webサイトに動画を掲載する。
YouTubeに公式チャンネルを開設し、動画を展開していく。
《主な動画の内容》
- 企業の商品
- サービスの紹介
- 商品
- サービスの使い方の解説
- 導入事例の紹介(お客様の声)
- 企業のPR動画
- プロモーション
- 採用動画
◎ 動画広告
主に商品・サービスなどの認知を目的とした動画で、YouTubeやWebページの広告スペース、Instagramなどに広告として表示させる動画。
さまざまな種類がある動画広告には、主に下記のような広告がある。
- YouTubeなどの動画の冒頭、合間、最後に差し込まれる動画広告(インストリーム広告)
- 一般的なWebページの途中に掲載される動画広告(インバナー広告・インリード広告)
- InstagramやFacebookといったSNSでメインコンテンツの間に掲載される動画広告(インフィード広告)
たとえば、「動画広告」はどういったところで見る機会があるかというと、YouTubeで動画視聴をしたことがある方は、動画の冒頭や途中に挟まれるかたちで「動画広告」を見たことがあると思います。
「企業のマーケティング動画」は、取引先の企業や競合のWebサイト、または大手企業のWebサイトを訪問した際に見る機会があるかと思います。Webサイト内に動画が貼り付けてあり、サイトを訪問したユーザーはいつでも再生できるようになっているはずです。
上記で示した2つの動画マーケティング「企業のマーケティング動画」と「動画広告」は、主旨が異なり動画の企画・シナリオ・制作方法などが大きく変わります。
本記事では、自社WebサイトやYouTubeチャンネルに掲載する「企業のマーケティング動画」、つまり「企業のマーケティング用の動画コンテンツ」に焦点をあてて解説していきます。
2. なぜ今、動画マーケティングが注目されているのか
結論から言うと、近年動画マーケティングが注目されているのは、「動画広告市場の拡大」によるものです。そして、この「動画広告市場の拡大」は下記の3つの要因により促されています。
- 動画視聴の環境が整備された
- 動画を視聴するデバイスの普及
- 動画コンテンツのプラットフォームが増えている
◎ 動画視聴の環境が整備された
年々、通信環境が整備され、Wi-Fiをスムーズに使える場所も増えており、エリアも拡大しつつあります。こういった環境の整備により、ユーザーは月々のデータ通信量の制限を気にかけることなく、動画を視聴できるようになりました。動画マーケティングが急速に成長している背景には、この環境整備が大きく影響しています。
◎ 動画を視聴するデバイスの普及
動画をスムーズに視聴する環境が整備されるとともに、スマートフォンやタブレットといった、手軽に動画コンテンツを視聴できるデバイスも、世界規模で大幅に普及しました。こういったデバイスの普及により、ユーザーは、さまざまな時間帯にあらゆる場所で、動画コンテンツに接触できるようになりました。
◎ 動画コンテンツのプラットフォームが増えている
動画を視聴するデバイスの普及が進んだことにより、動画コンテンツのプラットフォームも増えました。動画コンテンツのプラットフォームで最も有名なのは、YouTubeです。
こういった比較的歴史が長い動画コンテンツのプラットフォームの他に、最近では、Instagram・Twitter・TikTokといったSNSでも動画コンテンツを配信できるようになりました。
上記3つの要因により、「動画広告市場」は年々、着実に拡大しています。サイバーエージェントが2018年に実施した調査によると、動画広告市場について下記のように報告・予測しています。
- 2018年の動画広告市場は1,843億円
- 2020年に2,900億円、2024年には4,957億円に達すると予測
出典元:株式会社サイバーエージェント
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=22540
同資料では、「動画広告市場推計・予測(2017〜2024年)」をデバイス別でグラフ化しています。
このように、動画コンテンツの普及と連動し、動画広告市場の需要は、今後も確実に拡大していく見込みです。今動画マーケティングが注目されているのは、こういった背景があります。
3. 動画マーケティングの目的
冒頭でも述べた通り、動画マーケティングを活用するには「目的」を把握しておく必要があります。動画マーケティングを活用する目的には、主に下記のようなものが挙げられます。
【動画マーケティングの目的】
- 商品やサービスの紹介・解説
- 企業のブランディング
- プロモーション
- 採用
- 会社紹介、施設案内 など
これらは、「集客動画」「ブランディング動画」「コンバージョン獲得動画」といった分類で呼ばれるケースもあります。どういう目的か?によって、ターゲットも訴求ポイントも異なるため、動画の企画・構成・長さも変わってきます。
ターゲットによって、「動画の企画・構成・長さが変わる」ってどういうこと?……とイメージしにくい方もいらっしゃるかもしれませんので、わかりやすい例を挙げてみます。
たとえば、あなたの企業の商品を「認知」していないユーザー、つまりあなたの企業の商品の存在を全く知らない人がいたとします。その人に、商品の使用方法や解説といった、長めの尺の動画を見せてもまったく刺さらないでしょう。
商品を「認知」していないユーザーには、まずあなたの企業の商品の存在を知ってもらうために、商品の魅力を凝縮させた、短い尺のテンポ感のある動画を見てもらい、知ってもらうべきです。これは、「認知」を目的とした動画コンテンツにあたります。
では、商品の使用方法や解説といった、尺が比較的長めの動画は、どういうユーザーに見せるべきかというと、「購入直前」のユーザーです。すでにあなたの企業の商品を認知していて、他社の商品(競合の商品)と比較検証している段階にあたります。これは、「コンバージョン」を目的とした動画コンテンツにあたります。
このように、動画マーケティングを活用する際には、まずは「目的」があって、それに沿った「動画の企画・構成・長さ」があることを覚えておきましょう。
4. 動画マーケティングのメリット・得られる効果
動画マーケティングは、企業にとってメリット・効果が多いマーケティング手法です。ここでは、主となるメリット・効果を解説します。
より多くの情報を、より短時間で伝えられる
動画が60秒で伝達できる情報量は、Webページの3,600ページ分に相当すると言われています。これは、およそ180万語分の文字情報に相当します。
参考:18 Marketing Statistics And What It Means For Video Marketing
https://www.videobrewery.com/blog/18-video-marketing-statistics/
テキストベースのコンテンツが60秒で伝えられる情報量と比較すると、動画コンテンツの方が圧倒的に多いことがわかりますね。これまでWebマーケティングで主流だった「文章+写真(画像)」と比較すると、より短い時間でより多くの有益な情報を伝達できるのが動画の強みです。
企業・商品・サービスの魅力が伝わりやすい
静止画に比べ、動く映像は「視覚」を強く刺激します。そして、「聴覚」からも情報を伝えられるため、動画は商品やサービス、そして企業の魅力を最大限にアピールできるコンテンツです。
実際に商品を利用している動作シーン、サービスを利用しユーザーの表情が変化していく様子など、文章や写真だけでは表現しきれない領域を伝えられます。こういった「動く映像」で伝えたことは、印象に残りやすく、あとから商品やサービスの存在を思い出すことにもつながります。動画を観たユーザーの記憶に残る効果が期待できます。
拡散されやすい
動画は文章より拡散されやすいコンテンツです。「この動画おもしろい!○○さんに教えたい!」と思ったり、実際に動画のリンクを送って共有したりといった経験がある人は多いのではないでしょうか。
このように「こんなおもしろいPR動画、みんなにも観てほしい!」「こんな役立つサービスがあったなんて!」というような感動体験は拡散されやすいのです。SNSで拡散されると広告以上の宣伝効果を得ることができます。
SEO評価が上がりやすい
動画は再生ボタンをクリックするだけで手軽に情報を得られるため、ユーザーにクリックされやすいコンテンツです。よって、企業のWebサイトに動画を掲載している場合、ユーザーが動画の再生ボタンをクリックするごとに、Googleによる企業Webサイトへの評価も上がります。
つまり、動画再生というユーザー行動はSEO評価が上がる要素になっていると言えます。SEOの観点から見ると、動画を掲載していないWebサイト(またはWebページ)より、動画を掲載しているWebサイト・Webページのほうが、Googleの評価は高くなります。
これは、Googleが「ユーザーにとって価値のあるコンテンツ」を重視していることが起因となっており、「動画はユーザーに求められている」「価値の高いコンテンツ」と認識・評価していることが関係しています。
また、YouTubeはGoogleのサービスの一部なので、YouTubeの公式チャンネルを育てていくのも、Googleの評価を上げる効果があります。現在、企業のほとんどが自社のWebサイトを持っている時代です。同じように、今後は、企業のほとんどが動画コンテンツを活用し、自社のYouTube公式チャンネルを持つようになるとも言われています。
コンバージョン率アップを見込める
自社の商品またはサービスを「購入しようか、どうしようか……」と決めかねている「購入直前」のユーザーに対し、特に高い効果を発揮するのが動画コンテンツによる訴求です。
たとえば、この「購入直前(購入1歩手前)」のユーザーに、「商品の使い方の詳細」や「実際に使用している人の声」といった動画を提供することで、商品の使用イメージを具体的に想像できたり、疑問や不安を解消できたりします。よって、ユーザーは動画視聴後に、購入・申し込み・問い合わせといったコンバージョンにつながる行動をする確率が高くなります。
このように、ユーザーの段階に適切な動画コンテンツを提供することで、効率良くマーケティング効果を得られます。
5. 動画マーケティングのデメリット
動画マーケティングはメリットが多く、享受できるものも大きいです。
しかし、動画マーケティングにもデメリットは存在し、メリットと同様にひとつひとつが大きなものになっています。動画マーケティングを始める前にぜひデメリットも知っておきましょう。
良質な動画を社内で制作するのがむずかしい
企業が発信する動画コンテンツはある程度クオリティーの高い動画である必要があります。なぜなら、動画コンテンツのクオリティーは、そのまま企業イメージ、商品イメージと直結するからです。
企画によっては、ホームビデオ感覚、または一般的なYouTuberの動画のように作った方がターゲットにささる動画が存在することは確かです。しかし、そういった動画は、ターゲティング、訴求ポイント、ユーザー心理などを考慮した結果、企画されたものであるべきです。
良質な動画コンテンツに仕上げるには、企画・撮影・照明・編集のすべてにおいて、できるだけ一定の水準を満たす必要があります。これら一連が安定していることにより、視聴者はストレスなく動画を視聴でき、メッセージ(商品のアピールなど)をスムーズにキャッチできます。
たとえば、カメラが頻繁にブレたり、編集が不自然だったり、BGMが不自然なタイミングで途切れたりすると、視聴者はそのことに気をとられてしまうため、重要なメッセージをキャッチすることがむずかしくなってしまいます。
このように、企業にとっては高品質な動画を作ることはとても大切なのですが、社内に高品質の動画制作ができる人材がいることは、稀だと思います。最近では、こういった動画コンテンツの需要、そして動画の内製化を見越して、「動画制作の経験者」「動画編集の実務経験者」を採用する企業も増えています。
工数が多い(時間と手間がかかる)
動画コンテンツ制作の特徴は「工数が多い」ことで、これはデメリットとも言えます。たとえ、社内で内製できたとしても制作会社に外注したとしても、すべき工程は多く、時間と手間がかかります。
また、社内で制作する場合には、課題と目的の共有・ターゲティング・企画立案・シナリオ作成・撮影リスト作成・撮影・編集・調整・公開などの工程をすべてを行います。
制作会社に外注する際には、これらのほとんどを制作会社に任せることができますが、要所要所でしっかりとした打ち合わせが必要になります。また、「編集後の動画確認」⇒「修正指示」⇒「修正」⇒「確認」というやりとりを、完成まで数回行うことになります。
外注の場合コストが発生する
動画マーケティングおよび動画コンテンツを外注する場合、制作コストがかかってきます。動画は価値あるコンテンツですが、制作費は決して安い価格ではありません。
その理由は、動画は完成するまでに多くの工程に沿ってすべきことが多く、必然的に、時間も関わるスタッフも増えるためです。(スタッフとは、動画の企画やディレクション、編集をする動画・映像クリエイター、フォトグラファーなどです)
6. 動画マーケティングの活用事例(成功事例)
動画マーケティングの成功事例で紹介されるのは、大手企業の動画コンテンツが多い傾向にあります。ここでは、中小企業にフォーカスして動画マーケティングの活用事例を紹介していきます。
① 鞄工房山本
ランドセル専門店の鞄工房山本(従業員およそ60名)は、奈良県橿原市の工房を拠点とし50年続いている企業です。奈良工房・本店の他に、銀座と表参道に実店舗を構えています。
ランドセルは子どものための商品ですが、お金を払うのは親または祖父母といった大人です。このPR動画は、そういったターゲットに的確に訴求する動画になっています。
鞄工房山本はWebページにも動画を掲載し、YouTube公式チャンネルも開設しています。
鞄工房山本Webページ
https://www.kabankobo.com/
鞄工房山本 YouTube公式チャンネル
https://www.youtube.com/user/kabankoboyamamoto
② 社会福祉法人青葉福祉会《職員採用動画》
次に紹介するのは、社会福祉法人青葉福祉会の「採用コンテンツ」として作成された動画です。
採用動画の利点は、ひと目で社内の雰囲気や一緒に働くことになるスタッフの様子を把握できることです。動画を通して、細かなニュアンスや空気感までつかむことができるため、求職者が抱える不安を払拭する効果があります。
また、採用動画のポイントは、この社会福祉法人青葉福祉会のように、「求職者の誰もが知りたいと思っていること」を、インタビューによってしっかりと引き出すことです。
この動画を視聴し終えた求職者は、安心感や親近感を感じ、「ここならやっていけるかも」「一緒に働きたい」と思う方が多いのではないでしょうか。採用に動画コンテンツを起用する企業が増えているのは、動画の訴求力の高さにもあります。
また、同社はWebサイトのトップページにも動画を掲載していますが、このトップページに掲載されている動画は、構成・長さ・編集方法が上記の「採用動画」とはまったく異なります。その理由は、Webサイトのトップページを訪問するターゲットに訴求できる最適なコンテンツにするためです。
ぜひ1度動画を視聴し、違いを体験してみてください。
社会福祉法人青葉福祉会
http://aofuku.or.jp
社会福祉法人青葉福祉会 YouTube公式チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCyQAqYAdtjzvyiexDQ0AGSA/videos
7. 動画マーケティングを成功させるポイント
動画マーケティングを成功させるポイントは、繰り返しになりますが、やはり、まず「目的を明確にする」ことです。
「なんのために動画を作るのか?」「なぜ動画マーケティングなのか?」を徹底的に考え、設定した目的は社内で共有します。「動画コンテンツは作りたいが、何のために作るべきかがぼんやりしている」といった場合には、最初に自社の課題の洗い出しを行いましょう。
目的を明確にするためには、現状の課題把握が必要だからです。自社にはどんな課題があり、その課題を解決するためには何をすべきか?を考えていく過程で、もしかしたら動画マーケティングよりも先に着手すべきことが見つかるケースもあるかもしれません。
目的が明確になったら、その目的にあった動画を企画・構成していきます。
集客を目的とした動画なのか、企業ブランディングを目的とした動画なのか、あるいは、購入・お申し込みといったコンバージョンを目的とした動画なのか……、前にも述べた通り、こういった目的ごとにターゲットは異なるため、動画の企画・構成・尺なども変わってきます。
動画コンテンツの骨となるのは、上記で示した「目的の明確化」と「企画・構成」の2つです。もちろん、シナリオや撮影・編集も大事な要素なのですが、この「目的の明確化」と「企画・構成」がしっかりできていないと、どんなに魅力的なシーンが撮れたとしても、伝わらないコンテンツになってしまいます。
これらを踏まえたうえで、動画マーケティングに取り組みましょう。
8. まとめ
最後に、本記事で解説してきた「動画マーケティングのメリット」についてまとめます。
動画マーケティングとは、大きく下記の2つに分類されます。
◎ 企業のマーケティング動画
- 企業の商品
- サービスの紹介
- 商品
- サービスの使い方の解説
- 導入事例の紹介
- 企業のPR、採用動画
◎ 動画広告
主に商品・サービスなどの認知を目的とした動画。
YouTubeやWebページの広告スペース、Instagramなどに広告として表示させる動画。
動画マーケティングが注目されているのは、「動画広告市場の拡大」によるもので、その背景には
- 動画視聴の環境が整備された
- 動画を視聴するデバイスの普及
- 動画コンテンツのプラットフォームが増えている
上記の3つが関係しています。
動画マーケティングの目的には
- 商品やサービスの紹介
- 解説
- 企業のブランディング
- プロモーション
- 採用
- 会社紹介、施設案内 など
といったものがあります。
動画マーケティングのメリット・得られる効果は、下記の5つです。
- より多くの情報を、より短時間で伝えられる
- 企業・商品・サービスの魅力が伝わりやすい
- 拡散されやすい
- SEO評価が上がりやすい
- コンバージョン率アップを見込める
動画マーケティングのデメリットは、下記の3つです。
- 良質な動画を社内で制作するのがむずかしい
- 工数が多い(時間と手間がかかる)
- 外注の場合コストが発生する
動画マーケティングを成功させるポイントは
- 「目的の明確化」
- 「企画・構成」
この2つを最初にしっかり行うことです。
以上が、本記事のまとめです。
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