2020年3月より、岐阜県にある株式会社アクシスで働く瀬川義人さんは、企業のWebマーケティングのコンサルティングを行っています。
瀬川さんは入社前、フリーランスとしてWebメディア運営をし、生活できる程度の収入を得られるまでに成長します。その当時を振り返ってみても、その生活には「かなり満足していた」とのこと。
しかし、その生活を手放し、およそ5年ぶりに会社員へと転向します。なぜなら、このままでいいのかという焦燥感、Webマーケティングをもっと突き詰めたいという向上心が生まれたからです。
入社後は、わずか1年弱の間に自社のWeb集客の仕組みを築き上げ、リード獲得数を500%増にするという偉業を成し遂げます。
そんな瀬川さんに、企業で働くWeb担当者のひとりとして、働き方や想いなどを伺いました。
※この記事で示すWeb担当者とは、Webに携わって働く人のことです
およそ5年ぶりに会社員になった瀬川さんは、普段どんなことをしている?
鈴木:瀬川さん、今日はよろしくお願いします!企業で働くWeb担当者のひとりとして、リアルな声をお聞きできるとうれしいです。
さっそくですが、瀬川さんは普段どんなことをやっているのか教えてください。
瀬川さん:はい。こちらこそ、よろしくお願いします!僕が普段やっていることとしては、大きく分けると2つありまして。
1つは、自社のマーケティング・営業のこと。自社のマーケティングでいうと、いわゆるリードを獲得するといった動きから、メールや電話でアクションを起こすインサイドセールス的な動き。あとは、セミナーやメルマガもそうですし、認知度を高めるための広報的な活動といったところも、僕が担当しています。
さらに、案件の営業担当とうまくバトンタッチするような動きとして、初回の商談にも出ています。といった辺りが、まず自社のマーケティングに関する部分です。
鈴木:いや、ここまで聞いただけでも盛りだくさんですね。さらに、もう1つの動きがあるんですよね。
瀬川さん:そうですね。もう1つは、お客さまのコンサルティングになります。
自分が担当しているお客さまとの定例会もありますし、日々の連絡とか、施策の支援とかも全部やっている感じです。割合的にいえば、自社の動きも増えてきたので半々くらいなんじゃないかなと思います。
鈴木:ありがとうございます!対応範囲の広さは、充分に把握できました(笑)営業要素がある部分にも携わっているようですが、フリーランス時代にも経験していたのでしょうか。
瀬川さん:いや、正直BtoBのマーケティングや営業は、さっぱりです。僕、フリーランスのときから法人向けの営業の仕方がわからなかったんですよ。それに、会社員として働くのも4~5年ぶりだったので、ビジネスマナーでいえば名刺交換と挨拶ぐらいしか知らないっていう状態でした(笑)
だから、BtoBのマーケティングや営業はアクシスに入社したら覚えたいと思っていた部分でもあったので、とりあえず本を買って読む、セミナーに行く、あとは考えるといったことを、四苦八苦しながらやってきた感じです。
鈴木:まさに、瀬川さんが企業に勤めたら覚えたいと思っていたことと、配属してもらった部署がマッチしたわけですね。インサイドセールスと聞くと、わたしは真っ先に「電話は苦手だ…」という発想になってしまいます。
瀬川さん:それでいうと、過去の経験が活きていると思うのですが、フリーランス時代の前はコールセンターでアルバイトしていたことがあるんですよ。日々お客さまからくる問い合わせの電話に出て、すでにそのときプチコンサルティングのような対応をしていたんです。だから “電話が嫌じゃない” という土台は、すでにそのとき築いていたような気がします。
あとは、電話をするからといって、そこで売り込むわけではないですしね。現状は社内のリソースが足りないこともあり、限られた人にしかアクションを起こせないので、ある程度の温度感がある人には電話を使っています。あくまでも傾聴を大事に、お客さまが困っていることを聞くとか、雑談をするようなイメージに近い感覚ですね。
すべての原点は過去にある。今に活きている経験と今をつくっている原動力
鈴木:過去の経験が、回りまわって今につながり、活きているのを感じます。フリーランスで働く前は、ほかにも何かやっていたのでしょうか?
瀬川さん:はい。実は以前、行政の仕事を請け負う会社に勤めていました。そのときは、会議の議事録や報告書の作成といったような、いわゆるペーパーワークをしていたんです。
僕、今でも覚えているんですけど、Word(ワード)100ページくらいの報告書をひたすら作っていたりとか。3時間くらいある会議の議事録を、一語一句聞き逃さないように文字起こしをしたりとか。
今思えば、あのとき、これ以上ないっていうくらい日本語に触れていたので、ライティングにつながる感性が磨かれたのかなと思っています。でも、Wordが嫌いになりそうでしたけどね(笑)
鈴木:100ページとは、なかなか手強いですね。でもそれは、たしかにライティングの原点のように思えます。ここまでの流れでいえば、順風満帆に経験を力に変えてきている印象を受けますが、つまずいたことはなかったですか?
瀬川さん:それはもちろん、ありましたよ。むしろ挫折のほうが多かったです。大学を1回辞めたり、目的を見失ってほぼニートみたいな生活したりしていたこともありました。決して、僕と同じような経験をしている人が悪いということではないんですが、あくまでも自分にとっては “なんとなく過ごしてしまっていた” 時間だったんですよね。
そこからまた、なんとなくブログを始めるわけですけど、「SEOって、何?」みたいなところからのスタートなので、独学とはいえ自分ひとりの力ではやっていけませんでした。
なので、もうとにかく、SEOに詳しい人に教えてもらっていましたね。コミュニティのような場に参加し、話を聞いて教えてもらったり。Twitterを活用し、東京や京都などいろいろな人のところに会いに行って、話を聞いていました。
そういった人とのつながりがなかったら、フリーランスでの生活はできていなかったと思います。
鈴木:たしかに、そうですよね。フリーランスという個人の看板だけで働くには、人とのつながりを大切にしなくては働けませんよね。さらにそこから、会社員になろうと思った“原動力となるキッカケ”が生まれてくるのでしょうか。
瀬川さん:本当に、そうですね。ありがたいことに、人とのつながりにも恵まれて楽しく仕事ができていました。
でも、あるイベントで飛び込み営業をしていたときに「あぁ、個人事業主の方なんですね…」って、何気なく言われたんですよ。自分の実力不足であったことは確かですけど、“個人という看板で働く僕” の無力さを痛感しました。
また、ちょうどその頃、自分のなかで「Webマーケティング」がおもしろくなっていたのも感じていたんです。だから、“個人”ではなく“会社”の看板を借りることで、今より多くのチャンスに巡り会えるのかなという想いと、もっとWebマーケティングを突き詰めたいという想いが重なった、いいタイミングだったのかもしれません。
当然、不安もありました。個人で活動していると、会社に入ったときに自分が通用するのかどうかってわからないんですよ。ましてや、当時の自分は「SEOのことがちょっとわかる」「記事をちょっと書ける」ぐらいだったので。会社に入って全然通用しなかったらどうしようって気持ちはありました。
今思えば、入社してからは不安に浸っている余裕もなく、業務と向き合って、気がつけば遠くまできていたように感じますね(笑)
「守破離」を大切に。あたりまえのことをちゃんとやる
鈴木:転機といわれるようなタイミングって、ありますよね。ところで、瀬川さんがWebマーケティングに取り組むなかで、大切にされている考え方として「守破離」があるって聞きました
瀬川さん:そうですね。Webマーケティングは、大海原に出るようなものだと思っていて、何かひとつでも海図や羅針盤のようなものを持たずに出るのは、こわくないですか?
これまでには、多くの時間とお金を使って取り組んできた人たちがいて、築き上げられてきた知識やナレッジがあるなら使ったほうがいいですよね。それをまったく知らずに進むと、同じ道をたどるリスクは上がると思うんです。
なので、その分野の本を何冊か読んで、いわゆる基礎的な知識や勘所みたいなものは学ぶようにしていて。ただ、セオリーのようなものはいろいろな前提があるので、同じようにやったからといって同じようにうまくいくわけではないんですよね。それだけだと、どこも似たりよったりになっちゃうと思いますし。
いわゆる破っていく部分、“自分たちの場合はどうしたらいいのか?” を考え、アレンジしていくことをローカライズと呼んでいるんですが、そうして少しずつセオリーから離れていくスタンスをとることが多いです。
鈴木:なるほど。わたし自身も、セオリーと、アレンジする部分とのバランスを考えることが多いので共感!その考え方を大切にしつつ、お客さまと接するときにはどのようなことを意識していますか?
瀬川さん:はい。アクシスでは、一貫して「Web戦略は大事だ」と言い続けています。
ひとつの施策、たとえばSEOだけを必死にがんばったからといって、Webの集客が伸びるとは限らない。これは、Web広告も同じことが言えます。
Webマーケティングは、パズルを組み合わせて絵をつくるようなイメージと似ているなと僕は思っていて。なんとなく、ひとつひとつのピースがあるだけでは、絵は完成しません。それぞれを適切な場所に配置していくことで、ようやく1枚の絵ができあがります。
なので、そういった組み合わせみたいなものがすごく大事だと思っていて。最終的にどういう絵が作りたいかを考えて、ピースを選び、置いていく。この作業が大事なので、そういった意識を持ってやっていますし、お客さまにも伝えたいですね。
鈴木:パズルで絵をつくるイメージは、わかりやすいたとえ。そんな風に、たとえ話を用いて伝えるという点においても、ローカライズの要素を感じました。
では、最後に、瀬川さんがこれからも大事にしていきたいことを教えてください。
瀬川さん:僕が思っていることとして、Webマーケティングでやっていくことは「あたりまえのことをちゃんとやる」というのがすごく大事。ちょっと記事を書いて、ちょっと広告をやった。でもうまくいかなかったから諦めちゃうというのは、非常にもったいない。
そしてこれはきっと、ほかの取り組みにおいても通じるところがあるんじゃないかと思っています。
なので、まずは「諦めない」こと。基礎とか、これはやったほうがいいよねといったことを、ちゃんと丁寧にやる。それだけでも、目に見える効果は出てくると感じていますし、結局それが最短距離なんじゃないかなと。
だから、めげずにこれからもがんばっていきたいですし、一緒にがんばりましょうと言い合える仲間がいたらうれしいです!
鈴木:瀬川さん、一緒にがんばりましょう!今日はありがとうございました。
瀬川さんとわたし(鈴木)が出会ったきっかけは、SalesZineさんでの対談記事でした。
当初、わたしが感じていた瀬川さんの印象は「きっちり型にはめて遂行している人」といったものでした。なぜ、そう感じていたのか、今回の取材を通してわかったような気がします。
それは、瀬川さんの大切にしている考え方の「守破離」。守るべきものをしっかりと守ったうえで、自分たちのやり方に落とし込む。そして、諦めずにちゃんとやる。そのひとつひとつが掛け合わさり、目に見える成果につながっているのでしょう。
この記事は、サンロフトのWeb担当者のひとりでもある鈴木が書いています。
企業のWeb担当者という立場で考えてみると、同じ境遇に置かれている人は多くいます。それぞれの場所で、それぞれの働き方で働くWeb担当者。
誠に勝手ながら、わたしにとっては仲間です。そんな仲間である人たちの心に、刺激や共感、エールとなるような何かが届きますように。といった、気持ちを込めて書いています。