「広告を消したいけど、×マークが見つからない! 」「×を押したつもりが、違うページに飛んでしまった!」。Webサイトを閲覧していて、こんな経験をしたことはありませんか? それは“ダークパターン”と呼ばれるデザイン手法のせいかもしれません。今回は弊社デザイナーチームの勉強会で取り上げた、ダークパターンの種類やリスクについてお話しします。
ダークパターンとは?
ダークパターンとは、ユーザーが本来意図していない行動を取るように設計された UI(ユーザーインターフェース)のことです。UIは、ボタンの配置や文字の大きさ、画面のレイアウトなど、ユーザーが操作するあらゆる要素のこと。これがユーザーの意思に反した行動を促すことで、使っている人に不満や不信感を与えてしまうことがあります。
ダークパターンにはさまざまな種類があり、その多くが日常的に使われているサービスにも潜んでいます。今回は代表的な7つのダークパターンを具体例とともに見ていきましょう。
スニーキング(こっそり)
通販サイトで商品をカートに追加し、いざ支払い時に画面を確認したら、いつの間にか手数料や送料が追加されていた――こうした、ユーザーに気づかれないようこっそり余計な出費を促す手法が「スニーキング」です。
また、複数の購入プランがある場合に、デフォルトで価格が高い「お徳用サイズ」や「定期お届けコース」にチェックが入っているケースも、スニーキングの一例です。(図1)
ミスディレクション(誘導)
「(オプションの保証に)本当に加入しなくて大丈夫!? 」といった不安をあおる通知(図2)や、二重否定言葉などで誤解を招きやすい案内文は、ユーザーの判断を意図的に誤らせる「ミスディレクション」に該当します。
ソーシャルプルーフ(社会的説明)
出所不明の口コミ(図3)や、旅行予約サイトでよく見かける「現在20人がこの宿を閲覧しています」といった通知は、「他の人も買っている・選んでいるなら、自分もそうすべきかも」と思わせる心理を利用したものです。
このような情報が本当かどうか、ユーザーには確かめようがありません。
(図1・2・3出展)消費者庁「2025年4月いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査」
いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査 | 消費者庁
オブストラクション(妨害)
ユーザーが希望する操作を意図的に面倒にする手法です。冒頭で紹介した、極端に小さい「×」ボタンや、背景に同化して見えづらい「×」ボタンも、これに該当します。
例:わかりづらいキャンセルボタン、複雑な解約手続き
アージェンシー(緊急性)
ユーザーに「今すぐ判断しないと損をする」と思わせることで、切迫感を与え、冷静な判断を妨げます。
例:「タイムセール終了まであと3時間」といった通知
スケアシティ(希少性)
具体的な在庫数は示さず品薄な印象を与え、「急がないと手に入らないかも」とユーザーに思わせることで、購買行動を促します。
例:「在庫は残りわずか! 」のメッセージ
フォースドアクション(強制)
ユーザーに明確な同意を求めないまま、次のステップへ強制的に進ませる設計です。
例:無料期間終了後、自動的に有料モードに切り替わるサブスクリプション
短期的な効果より、長期的な信頼を
ダークパターンは、一時的にはクリック数や会員数を稼げるかもしれません。しかし、ユーザーに不信感を与えれば、サービスの解約や批判的なレビューといった形で、いずれ企業に跳ね返ってきます。そして何より、ダークパターンを使う企業は「誠実ではない」と判断され、ブランド価値の低下を招くことになるでしょう。インターネット上での印象は、そのまま企業や商品のイメージに直結すると言えます。
デザインは、ユーザーとの大切なコミュニケーション手段です。だからこそ、自社のコーポレートサイトや通販サイトなどに、意図せずダークパターンが含まれていないか、今一度、見直してみてはいかがでしょうか。
サンロフト社員の声

DX事業部 デザイン課
細田侑里
最近、何度も繰り返される広告表示や、解約方法がわかりにくいサービス、不親切な定期便の申し込みフォームなど、「ダークパターン」と呼ばれる表現を目にする機会が増えてきました。自分自身、そうした体験に不快感を覚えることが多く、つくり手の私たちも無意識にこうした表現を使ってしまわないよう、デザインチームで勉強会を実施しました。アクセス数やCV率(サイト訪問者のうち、目的の行動をとった人の割合)を高める工夫が、気づかないうちにユーザーの利便性を損ねているのかもしれません。皆さんも、日ごろインターネットを利用していて、ダークパターンに遭遇した経験があるのではないでしょうか。そのときの違和感を忘れずに、これからもユーザーにとって誠実で、ストレスのない体験を提供していきましょう。
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