2025年12月に全面施行される「スマホソフトウェア競争促進法(SSCPA)」、いわゆる「スマホ新法」は、スマートフォンのOSやアプリストアなどに関する競争を促進し、公正な市場環境を整えることを目的とした法律です。
現在、iPhoneのアプリは基本的にApp Storeからしか入手できません。Androidも原則としてGoogle Play経由です。この仕組みにより、中小規模の事業者は高額な手数料のため、新しいアプリやサービスを提供しにくい状況にありました。スマホ新法は、こうした不公平を是正し、市場競争を活性化するために整備されました。
スマホ新法では、モバイルOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジンの4つを「特定ソフトウェア」として規制対象に定め、Apple、iTunes、Googleの3社を指定事業者としています。これらの事業者には、遵守すべきルールや禁止事項が設けられており、その結果としてアプリストアの開放、課金システムの自由化、OSやブラウザ、検索エンジンの競争促進が期待されています。
一方で注意したいのは、これまで安心・安全と思われてきたスマホのセキュリティに新たなリスクが生じる懸念です。AppleはApp Storeで厳格な審査を行い、マルウェア(ウイルス)が混入していないか、個人情報を不正に収集しないかなどをチェックしてきました。Androidも審査は比較的緩やかではあるものの、問題のあるアプリはすぐに削除される仕組みが機能していました。しかし、スマホ新法により、公式ストア以外のアプリストアも利用ができるようになります。これにより、公式ストアにはないアプリやサービスが登場する一方で、審査が緩くセキュリティ設計の不十分なストアも出てくるかもしれません。こうしたストアでは、マルウェアを含むアプリや、個人情報を盗み取るアプリが配布されるリスクが高まります。
また、Appleに対しては、自社製品以外の周辺機器(充電ケーブル、イヤホンなど)の利用を認めるよう求められています。現在は、周辺機器に対しても「MFi認証」という仕組みでAppleが審査し、安全を担保してきました。しかし今後は、非認証製品の流通をAppleが制限できなくなるため、マルウェアの混入やユーザーデータを奪うような危険な周辺機器が出回る可能性があります。
欧州では2024年3月に同じような「デジタル市場法(DMA)」が施行され、Apple、Google、Amazon、Meta、Microsoftに対して競争阻害行為の禁止や透明性確保の義務が課されています。その結果、新たなアプリストア経由でマルウェアやポルノアプリなどが流通するなどの問題も報告されています。
スマホ新法でも、欧州の事例を参考に、セキュリティやプライバシー、青少年保護の遵守が求められています。しかし最終的には、利用者自身が「自分のスマホを守る」意識を持つことが重要です。安全性を重視する場合は、これまで通り公式ストアを利用するのが安心でしょう。公式以外のアプリストア利用は、子どものスマホのペアレンタルコントロールをきちんと設定する、会社支給のスマホは会社側がモバイルデバイス管理ツール(MDM)で制限をかけるなど、慎重に管理していく必要があります。今のうちから準備を進め、安心してスマホを利用できる環境を整えておきましょう。
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情報提供:地域貢献事業部 サイバーセキュリティ担当 藁科 |
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