近年、地域課題の解決や移動の利便性向上を目的として、複数の交通手段をICTで1つのサービスに統合する「MaaS(Mobility as a Service)」が注目されています。静岡県焼津市では、地域の新しい人材交流を生み出すしくみづくりとして、ビジネスマッチングアプリと時速20km以内で公道を走る小型電気自動車(グリーンスローモビリティ)を組み合わせた実証実験が行われました。
焼津では、臨港地区の開発が進む一方で、2023年4月にオープンするテレワーク施設「焼津PORTERS(旧「漁具倉庫」)」をはじめ各拠点を結ぶ交通手段がなく、首都圏などからのビジネスパーソンや観光客にとって移動が不便で、交流が生まれづらいという課題がありました。
「つなモビ」は、ビジネスマッチングアプリ「FLAG」を用いて、焼津駅南にある23拠点をつなぐモビリティサービス。人と人とのつながりを生むことを目的に、MaaSや地方創生事業にノウハウを持つ合同会社うさぎ企画が発案し、2023年1月~2月、焼津市の協力のもと「人材交流×移動需要の効果」について実証実験が行われました。
参加者が「FLAG」に自分の関心テーマを登録すると、交流拠点の情報に加え、そこにいる参加者の情報も閲覧することができます。アプリ上でメッセージを送り、その人に会いに行くことが可能。アプリでチケットを購入すれば、グリーンスローモビリティや電動自転車が1日乗り放題で、待ち合わせ場所まで行くことができるというしくみです。
利用者からは、「低速なモビリティだからこそ気づける街の魅力があった」「500円で焼津の各所を回れるのは便利」「市外の方と気軽につながれる交流アプリ機能がありがたい」などの声が集まったとのこと。また、仕掛け人のうさぎ企画・森田さんは、「場所を選ばずに仕事ができる首都圏からの関係人口を定着させる人づくり、関係人口と地元住民との交流拠点をつくる場づくり、そして、移動手段を整えて広域交流を促す足づくりが大事」と、これからの地方都市が元気になる要素について語りました。
本実証実験は、登録者271名、チケット購入者173名、総施設来訪者601名という結果だったそうです。今後は範囲を拡大しての実験も検討中とのこと。地方都市における人材交流×モビリティの可能性に期待が高まります。
サンロフト社員より
実証実験に参加してきました。グリーンスローモビリティはゆっくり進むため、商店街の雰囲気も伝わりやすいと感じます。また、ビジネスマッチングアプリ「FLAG」の開発会社である㈱LANDMARK代表の讃井さんに出会うことができました。後日、サンロフトのエンジニアと交流会をしましたが、讃井さんは人との出会い、そこから生まれる行動の力を「セレンディピティ(素敵な偶然に出会うこと)」という言葉で表現されていて、私含めエンジニアも刺激を受けました。これからエンジニアのセレンディピティをもっとつくっていきたいです。